くちびるに微笑みを持て。
イギリスのアーコール社の家具が好きです。わかりやすくマーガレット・ハウエルの影響です。
なかでも長年憧れていたのがスモーカーズチェア。流通は少なく入手困難なこの椅子が、フォローしているお店のSNSで入荷したのを知り、思い切って購入しました。
肘掛けがテーブルに収まらないので、ダイニング向きではありません。寝室の縁側に置いて、もちろん座るけど、あるだけでうれしい。在宅勤務の私にとって、心和む光景です。
さて、クラフトフェアまつもとが今年も中止になりました。残念ではありますが、事務局の英断を支持します。
フェア開催に向けて制作を進めていた機関誌『掌』はすでに納品され、まもなく販売もはじまるでしょう。
https://matsumoto.handcrafted.jp/
特集タイトルは「なごみのカケラ」です。
私は刺繍絵の宮崎友里さんと正藍染キャンドルの湯本紗雪さんを取材しました。
工芸は(少なくとも私の)暮らしに必要なものですが、実用だけがその役割ではないよなあ。そんな思いをリードに込めました。以下に転載します。
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身近な針と糸を手にして描いた刺繍の絵が、やわらかな色彩をまとわせ光を通す。製本の過程で出る不要の端材から生まれた紙の束が、風にゆらぎ、香りを漂わせる。
米作りの一環で作られる藁細工が、素朴ながらも神聖な佇まいで結界を張る。育てた植物を生かすことに端を発する正藍染のろうそくが、温かな光を灯す。
今回取材した刺繍絵も、紙束も、藁細工も、正藍染キャンドルも、実用的な暮らしの道具ではありませんが、やさしく心に作用して、不安や恐れをやわらげ、気持ちをなごやかにしてくれます。
緊急事態が、もはや恒常的にすら感じられる日々ですが、なごみのカケラを暮らしに散りばめて、平常心を失わぬように。
たとえマスクで見えなくとも、くちびるに微笑みを持て。
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最後の一文に山本有三さんの訳詩「くちびるに歌を持て、心に太陽を持て」へのオマージュを込めて。
戦中戦後の子どもたちを支えた詩ですが、コロナ禍の今こそ子どもたちに(大人にも)読んでほしい詩です。同じことを考える教育者がいらっしゃったので、どこかの校長先生のお便りをリンクしておきます。(結)