シンビズム3を観に、中野へ
≪Rosehip|バラの実≫ 柿崎順一さん
今年も、シンビズムが開催されています。シンビズムとは、学芸員さんなどで組織する信州ミュージアム・ネットワークが選んだ作家さんたちの作品展です。今年で3回目。これまでは同時期に4会場で開催していましたが、今年は時期をずらして4会場で開催。
今日、11月24日まで開催しているのが今期3回目となる展示で、中野市の一本木公園・中野小学校旧校舎・信州中野銅石版画ミュージアムで開催しています。
展示作家は会場ごとに異なりまして、今回は、ガラスの増田洋美さん、花の柿崎順一さん、映像の榊原澄人さんの作品です。
≪PLAY THE GLASS amabile(愛らしく)≫ 増田洋美さん
≪PLAY THE GLASS veto(風)≫ 増田洋美さん
シンビズムは初年度から図録の校正のお仕事をさせていただいています。作家さんの原稿と、作家さんを紹介する学芸員さんの原稿がどさっと届けられるのですが、印象的なのは学芸員さんの原稿です。作家への愛にあふれ、とても哲学的。正直、難しいなあと思いつつ、でもその言葉をたどりながら作品を観るのも楽しみです。
増田さん、柿崎さんの作品も心をつかむものでしたが、初めて拝見した榊原さんの作品が印象的でした。図録で榊原さんの作品を解説していたのは山ノ内町立志賀高原ロマン美術館の鈴木一史さん。榊原さんの作品は映像なので、図録に掲載された作品画像を眺めるだけではその世界観はわかりづらいのが実のところ。だからこそ、学芸員の鈴木さんの言葉が頼り。鈴木さんの原稿は毎年やっぱり学芸員さん特有のちょっとした難しさを感じるけれど、でも文章にじむ雰囲気が好きだなあと思う。
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反復の永遠性が中毒性を持って続く
鑑賞者であるはずの自分自身が置き去りにされて、焦点の無い世界の、それもまた色の外で同時多発的に起こる現象がきにならないはずもなく、流れる画面の隅々までもが気になりはじめる
夢中とはいわば「夢を見ている間」であるが、榊原作品における「夢中」とは、現実世界から引き離されつつも、意識をはっきりと存在している状態
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いったいどんな作品なんだろう。そう思って出かけて、対峙して、まんまと夢中になってしまった。≪É in Motion No.2≫の静謐さと残酷さ。心の奥の方が轟々として全身全霊をつかって観ないと追いつかない。人生はあちこちにちらばってあって、それぞれ表も裏も持っていることをまざまざと見せつけられる。そんなことを思って、つらい。つらいけど圧倒される。先に観た代表作の≪浮楼 Flow≫に人の一生の幸せが詰まっていたから、余計にそのギャップもまたどしんとくる。帰り際、もう一度≪浮楼 Flow≫を観て、少し息をつく。
作品を観て帰ってきて、鈴木さんの言葉を読み返すと、すとんと落ちてくる。学芸員さんてすごいなあ。ぜひたくさんの人に観てほしい展示。でも今日までなんですけどね。もっと早く観にいければよかった。4回目の展示は1月19日から茅野市美術館にて。(緒)
シンビズム3 図録
編集|伊藤羊子 校正|山口美緒 翻訳|近藤あき子・茂木作太郎 英文校正|Bradford Lee Reinhart デザイン・制作|中沢定幸 印刷|山田写真製版所 発行|一般財団法人長野県文化振興事業団