シャインマスカットのある風景



長い撮影から帰った夕方、玄関に置いてある紙袋。先日、印刷所のお兄さんにお貸しした傘が入っていると思われます。ご丁寧に紙袋に入れていただいてどうも!と思いつつ袋をのぞくと、そこには傘とともに、テンションが上がる音が聞こえるほどに美しいシャインマスカット! 粒が大きくて揃っていて、はじけんばかりのみずみずしさ。手に取るとずっしりと重い。
 
うれしい。
 
ぶどうは大好き。
一番好きなのはナイアガラ。郷愁を誘う香りがたまらない。個人的にはぶどうならなんでも種ごと皮ごと食べるのですが、それでもやはり、シャインマスカットのパリッとして残らない皮の食感は格別に気持ちよくて、さわやかな甘みもおいしいなあと思います。
 
お礼方々連絡すると、お父さんが育てたシャインマスカットなのだそう。ありがたや。
 
農産物がつくる風景ほど、しあわせな風景はないと思っています。とりわけ、果実。りんごは赤くてかわいいし、白い花を咲かせる姿は愛らしくて、いとおしい。ぶどうが重そうに実る姿は、妊婦のお母さんを見るような幸福感に包まれます。長野にはほとんどないけれど、柑橘が実をつける姿は、長野に少ないからこそ、多大な興奮を覚えます。柿が色を濃くし、枝を重くしながら葉を落とす頃には、そろそろ干しますか!と、季節の到来を思います。誰にもとられることなく雪をかぶる柿もまた、切なくも美しい。
 
果物は、農産物は、美しい。
 
台風に起因する災害でたくさんの農家さんが被害にあいました。幸い何事もなかったわが事務所。なにもできない自分。ニュースで、通り道で、泥をかぶった風景を見るにつけ、心を痛めるものの日々に追われるのみ。

この美しいぶどうを見て、食べて、しあわせがいっぱいに広がりました。おいしい。収穫を迎えられなかった農産物たちも数多く。だからこそ、このおいしさとしあわせをかみしめていただきます。
 
明日も明後日も、来年も再来年も、100年後も、もっと先も。おいしくて美しい風景がかたわらにあることを祈りつつ。(緒)