深山桜のダム貯蔵酒、試飲会
どこのお酒が好きですかと聞かれたら、正直迷います。夏はあれだけど秋が深まってきたらあれだし、秋刀魚のときはあれだけど今日はビーフシチューだからあれだとか、はたまた20代の頃はあれだったけど年を重ねるにつれてこっちがいいな、などなど。そんななかで、ぶれることなくここしばらく好きだと言い続けているお酒のひとつが「和和和」です。醸す蔵はJR佐久平駅にほど近い佐久市塚原に立つ古屋酒造店。代表銘柄は深山桜(みやまざくら)。
社長で杜氏の荻原深(ふかし)くんは、(お互い当時は知らなかったけれど)高校の同級生。広島大学を経て東広島市にある酒類総合研究所に進んだ深くん。わたしがただただ興味のある分野の勉強がしたいと思っていた同じときに深くんは家族を思い、家業を思い、道を進んでいったのかと思うと背筋が伸びる思いがします。そして飲んだ和和和のおいしかったこと。もう10年くらい前になりますが、わあっ! となった記憶は今でも鮮明で、それが今でも飲むたびに続いているわけです。とりわけ美山錦でつくる和和和のほのかな苦味が好みで、たとえば山菜や鮎など、土の味、川の味によく合うと思うのです。今季のひやおろしもジューシーさと旨みがぎゅっとしていて、しみじみおいしい。深くんのお酒はしみじみおいしい。
そんな深くんから、「ダム貯蔵したお酒の試飲をするんだが、ご都合よければ参加いかが?」というお誘いが。というわけで行ってきました。
近所に住んでいた東電の社員さんがダムの有効利用を考えたときに「日本酒を貯蔵してみては」と思い立ち、古屋酒造店に話を持ってきたんだそう。貯蔵したダムは真っ白なロックフィルダムの「南相木ダム」。圧巻の美しさでみほれてしまう、日本一標高の高い場所に位置するダム。ダム貯蔵の日本酒は、東京電力管内では大町の七倉ダム(薄井商店さんの白馬錦を貯蔵)に続き2番目だそう。
貯蔵ダム|南相木ダム(長野県南相木村)
貯蔵期間|平成30年4月26日〜9月18日
貯蔵酒はこちらの4種
①純米酒ひとごこち59%精米瓶火入れ1回
②純米吟醸美山錦55%精米瓶火入れ1回
③純米酒ひとごこち59%精米無濾過生原酒
④純米吟醸美山錦55%精米無濾過生原酒
貯蔵状態はこちらの4パターン
A冷蔵庫貯蔵(3℃)
Bダムトンネル貯蔵(ダム天端)
Cダムトンネル貯蔵(ダム下)
D倉庫内常温貯蔵(3〜25℃)
①に対してA〜Dまで、②に対してA〜Dまで…という組み合わせで試飲して、それぞれA〜Dの順位をつけるという試飲方法でした。①〜④のお酒の違いなら飲んでみればある程度わかりますが、A〜Dの飲み比べとなると同じお酒の貯蔵場所(温度)違い…。これが素人のわたしにはとっても難しく、でも面白いものでした。
私見ですが、①〜④を通じてAは香りが華やかで、BCは香りも味わいも比較的穏やか。BCだとCのほうが少し飲みやすいというか、やさしい印象。深くん曰く「ダム下の方が天端(上)よりも湿度が高いことが関係するのかなあ」と。ふむふむ。Dはほかのものよりちょっと個性が出ている感じ。
①〜④の違いでいうと、お酒の違いが大きく影響していると思いますが、②が好み。トータルでは②A、②Cあたりが好みという結果だったと思います。
人の叡智が詰まったダムに、これまた人の叡智と自然の作用がとことん詰まった日本酒が貯蔵されるというのは、個人的にはぐっとくるところ。今年は試験貯蔵で、来年に向けて商品化する予定だそうです。見かけたらぜひ手に取ってみてください。銘柄は和和和ではなく深山桜のほうです。
ちなみに深くんはSAKU13の冊子&HPによるとこんな人。SAKU13の冊子&HPの人紹介はどの人も読んでいてその人に会いたくなるとてもすてきな文章ですが、深くんのもまた佳文。深くん、まだ一緒に飲んだことがないけれど、泣き上戸なんだなあ。(緒)
(写真は試飲会場の長野県工業技術総合センター。飲み会じゃないんです、ちゃんとした試飲会だったんです)